スタジオでのディストーション(記事翻訳)002

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Less Is More
レコーディングの際に気をつけなければならないのは最終的に必要になる以上の歪みを加えないことです。ミックスの段階で更に歪みを加えることはできますが、すでに歪んでいる音源を音に戻す実用的な方法は存在しないためです。確信が持てない場合は念の為、スプリッターまたはA / Bボックスを使用して、歪みのある音と歪みのない「ドライ」バージョンを一緒に記録すると良いでしょう。

Reducing Distortion
可能な限りクリーンなギターサウンドに似せたシンセを用意し歪みがかかりすぎたギター音源に重ねることによって見せかけの歪みを減らすことは可能です。たとえ、このシンセの音を聞こえないくらいにミックスしたとしても歪みすぎて失われたギターのピッチを取り戻すことができます。

It's All About Contrast
常にコントラストを維持してください。 デスメタルでもない限り、歪んだ音とクリーンな音のバランスを取ることをお勧めします。たとえば、ミックスに歪んだギターが含まれている場合、ドラムとベースをクリーンに保つことによって歪んだギターがより際立ちます。

I'm So Excited
歪みの一般的な認識は、音声の明瞭さが低下することです。 ただし、歪みを周波数スペクトルの特定の部分に限定すると、実際に明瞭感を高めることができます。Aphex Aural Exciterはこの原則に基づいて動作します。入力された音にハイパスフィルターをかけたものをノンリニアサーキットに通して歪ませ、クリーンな信号とミックスさせます。こうすることで原音にはなかった高次倍音を合成し、明るさとディテールを際立たせます。尚、EQは対照的にすでに信号にあるものを増幅させます。

一般的には音が明るくなるすぎるのを避けるため、ハーモニックエンハンサーは控えめに使用しなければなりません。しかし、スネアやパーカッションなどを明るくするために積極的に活用するケースもあります。ハーモニックエンハンサーを使用せずとも歪んだ音とドライの音を混ぜることによって興味深い結果を得られることもあります。元の音源をコピーペーストし、そのうちの1つにディストーションプラグイン)を追加することで、簡単に試すことができます。気をつけなければならないのは耳は明るい音や大きな音に騙されやすく、(ミックス作業などで)長い時間のリスニングによって疲れている場合にはその傾向が強まります。そのため、翌日にエンハンスされた音源を改めて聞き、歪みがミックスを本当に改善しているかどうかを確かめる必要があります。

Tubey, Or Not Tubey?
チューブ(真空管)はディストーションプロセッサーでよく使用されますが、優れたチューブマイクの音があからさまに歪んでいるとは考えないでください。古いコンデンサースタジオマイクが前世紀の半ばに設計されたとき、バルブまたはチューブが数少ない選択肢であり、デザイナーは可能な限りマイクがリニアに動作するよう制作しました。したがって、これらのマイクの音色特性の重要な部分を担う歪みはわずかなものです。その特性を私達は現在、温かさ(warmth)や滑らかさ(smoothness)と呼んでいます。近年のチューブディストーションを意図的に加えるように設計されたチューブマイクがありますが、それらは古くからあるものと比べて音楽的とは言えません。

Horses For Courses
アナログ機器は様々な方法で歪みを加えるため、検証が不可欠です。十分なオーディオI/Oがある場合は、外部アナログギアまたはギターペダルを介してトラックをルーティングしてみてください。アナログの歪みはほとんどの場合、デジタルエミュレーションよりも自然に聞こえるでしょう。さまざまなギアを比較し、どれが最適かを選びます。トランス結合された入力または出力を備えた機器は、トランスの磁気コアが飽和するにつれて、優れた歪み特性を追加するようになります。この際、サーチュレーションまたはクリッピングを引き起こすためにはインプットゲインを上げる必要があるため、適切なレベルを取り戻すため、出力でゲインを下げる必要がある点に注意してください。