ディレイとリバーブはミックスのどの段階でかければよいのでしょうか?(記事翻訳)

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https://www.soundonsound.com/sound-advice/q-when-should-i-add-delays-and-reverbs-my-mix

Q. ディレイとリバーブはミックスのどの段階でかければよいのでしょうか?


私は必要なトラックをすべて並べ、一つ一つを聞き、楽曲の中での優先順位をつけてミックスをしてゆきます。EQとヴォリュームコントロールで音源がうまく混ざり合い、かつそれぞれのトラックがはっきり聞こえるようになったら新たにエフェクトを加えてゆきます。しかし、このはっきり聞こえるようになったと思ったミックスにディレイやリバーブを加えると何かしらの影響が出てしまうのです。一般的に新しいトラックが追加されるそのたびにエフェクトを加えることが受け入れられているのはそのためでしょうか?この方法を用いればより多くのディレイ、リバーブを使用することになると思うのですが、そうした方が明瞭なミックスになるのでしょうか?

SOSフォーラムの投稿

A.
ディレイやリバーブについての厳格なルールはありませんし、エンジニアはそれぞれ個別の考えを持っていることでしょう。また、プロジェクトによっても使われる手法は異なります。アコースティックな音楽やロックバンドの分野に携わる機会の多いエンジニアはエフェクトを可能な限り使わないよう気を使います。それは、自然な響きを再現するために事後的な処理を行わないほうが良いからです。ミックスの段階になって新たなアイデアを加えるのではなく、アコースティックやロックトラックの率直さを表現するにはこの方法が適しています。また、多くの古くから使われているディレイやリバーブの品質のことを考えるとこういった手法が長きに渡って使われていることは当然と言えるでしょう。

もちろん、ミックス段階に入ってからのエフェクト処理が重要な場面も存在しますし、その場合、エフェクトは楽器と同じくらい重要です。この場合、楽曲のバランスを取る前の段階からリバーブやディレイを使用する必要があります。

理解しておかなければならないのはこのどちらのアプローチも絶対的に確実というわけではなく、どちらも思い描いたようなスムーズな作業手順にはならないということです。私の経験上、ミキシングとは反復作業であり、プロジェクトが終わるその時までそれぞれのトラックのレベル、パン、エフェクトの設定が決まりきってしまうということはありません。すべてのトラックが並ぶと、予測できないほど複雑な多数の相互作用に対応するため、あらゆるチャネルとプラグインウィンドウをあちこち探し回ることになります。エレキギターがあるミックスではボーカルを明るく処理するかもしれませんが、そうすると歯擦音がボーカルリバーブを強く叩きすぎることがわかります。リバーブチャンネルにディエッサーを使うとこの問題に対処できます。この問題に対処すると、次はピアノとタンバリンのリバーブを変更しなければならないかもしれません。一つの問題に対処すると別の問題が浮かび上がり、これらの一つ一つに対処してゆくうちにゆっくりとミックスの焦点が定まってくるのです。

センドエフェクトを使うか、インサートエフェクトを使うかはプロのエンジニアの間でもスタイルの問題です。センドエフェクトを用いる利点は個別のトラックが存在する想像上の一つの空間作り出し、全体像にまとまりをもたらすことができます。一方、個々のトラックにインサートした場合ではトラック間の相互作用をより細かく制御することができます。

この質問に対する明快な回答は存在しません。ただ、素晴らしいことは現代のシーケンサープラグインが、あらゆる作業方法を試す機会を与えてくれていることです。ソフトウェアの世界ではハードウェアでの作業に比べて制約が遥かに少なく、同時により多くのエフェクトを使用することができるからです。

回答者 Mike Senior(Sound on Sound誌寄稿者)