パッドの作り方と使い方(記事翻訳)001

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Pad Behaviour:
パッドとはなんでしょうか?一般的には楽曲のコード進行に対応して演奏される和声的なパートであり、楽曲の特定の帯域を埋める効果があります。ケースに応じてパッドが埋める帯域は様々です。この帯域を埋める効果には耳障りな音(harshness)を和らげる効果もあります。それ以外にもリズムギターやキーボードのサスティンを強調させる、ミックスのステレオイメージを広げるなど、用途は様々です。

パッドの存在そのものを感じさせる音作りはそんなに難しいことではありません。しかし、その効果の一部のみを活用しようとするとある程度の技術が必要になります。多くの音楽リスナーはアコースティックな楽曲、ハードロックなどでパッドが使われているということに気が付かないはずです。それは、このいずれのスタイルにおいてもシンセサイザーが使われているということに気づかれたくはないからです。楽曲の精度の向上と最小限の可聴性の微妙なバランスを取るためにはシンセの形態、コードヴォイシング、音色を意図した目的にそって適応させることが重要です。そして、そのためにはまず達成しなければならないことを明確にしなければなりません。

Appropriate Timbres & Parts
おそらく最も一般的なパッドはレガートで演奏されたサスティンの長い和声で、他のコード楽器のサスティンを強調したり特定の周波帯域を埋めるというものでしょう。このケースでは、シンセの音色とヴォイシングの相互作用によって望んだ周波帯域と望んだ倍音の密度を生成できるかがどうかが重要です。パッドが前に出過ぎないようにするためには、楽曲のそれぞれの帯域ごとでパッドの影響を受ける度合いが異なるということを理解しなければなりません。これに対処するために、パッドの特に聞こえる部分を切り分けて処理することがよくあります。私が普段やっているのは、パッドのレベルをミックスの中でよく聞こえるくらいになるまで上げ、特定の帯域をEQで切り、テクスチャに戻す手法です。そうすることで、聴覚的な心地よさを残しながら、人工的な質感を最小限にすることができます。特に目立つ帯域は聴覚が最も敏感な3〜4kHz付近でしょう。4〜6dB下げることは珍しくありません。

シンセサイザーオシレーターの波形は後の加工の影響を大きく受けます。ピッチノートは、一定間隔に連なった周波数で構成されます。その中で最も低いもの(fundamental frequency)が聴覚上のピッチを定義し、それ以外(倍音)が音色を定義します。

周波数密度の高い音でミックスの中の薄い帯域を支える場合は、多くの倍音を持つ、のこぎり波/ランプまたは方形/パルスの波形が望ましいでしょう。またはサンプルベースのシンセにある明るいソース波(ストリング、アコーディオン、ハーモニカなど)も候補として挙げられます。

一方で、幅広い帯域をカバーするのではなく、楽曲を構成するそれぞれの楽器のボディやサスティンをかすかに強調したいという場合には複雑な倍音構成のソースは適しません。正弦波または三角波、サンプルベースであれば、ミュートされた弦、フレンチホルン、オカリナなどの鈍いものが適切です。これらは特徴が少なく、かつ低次の倍音を多く含み、既存の楽器もつ音質への影響を最小限にすることができます。

どの波形を選ぶとしても、パッドを作成するにあたってはオシレーターのデチューンはおすすめしません。デチューンするとコードの明瞭さが弱まり、ミックスを曇らせることになります。フィルタースイープ、パルス変調、ビブラートなども目立たないパッドを作成する際には問題になるでしょう。それらの効果はミックスダウン時のピーク処理を困難にもします。

もう一つ重要なのはコードのポジションです。倍音の数は、オーディオスペクトルを上に1オクターブ進むごとに2倍になります。ローポジションのコードとハイポジションのコードでの効果は劇的に異なります。これはEQの調整以前に気をつけなければならないことです。ギターが演奏できる最も低いエリアのコードパッドに2kHz付近でバンドパスフィルターを施したものはミッドレンジを厚くします。同じコードが5オクターブ上にある場合はピュアな質感や突き刺すような印象になり、プロダクション全体の音質に大きな影響を与えることなく、高音楽器のサスティンを強調するのに適しています。