コンプレッション概要(記事翻訳)1/5

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Compression Made Easy
By Mike Senior

 

コンプレッサーから必要な結果を正確に得ることが、タイトでモダンなミックスの鍵です。ひとつひとつのパラメーターがなんのために設計のか、セッティングがどう影響するのかについて説明します。ミキシングの際、コンプレッションほど初心者を困らせるものはありません。コンプレッサーのパラメーターが具体的に何をするのかについては大まかに理解できるかもしれません。しかし、より具体的な質問に対して、どれだけの人が回答できるでしょうか?コンプレションをするのかどうか、またはいつ行うかをどう判断しますか?どの程度が適切で、どの段階を超えるとやり過ぎなのでしょうか?適切なアタックとリリースの設定はどのくらいですか?この記事は、このような質問への回答を手助けするでしょう。ほとんどのチュートリアルで行われているような、コンプレッサーの設計について説明することから始める代わりに、一般的なミキシングにおける難関を提示し、主要なパラメーターがいかにそれらを克服するのかを示します。

Dynamic Range
おそらく、ミックスエンジニアが直面する最大の課題は、適切なバランスを見つけることです。一見、これは単純なように思えます。すべてのトラックが適切な割合で聞こえるよう、チャンネルフェーダーを調整するだけです。しかし、ほとんどジャンルで、このような「静的」バランスをとるだけで作業が終わるようなことはありません。いくつかの言葉が聞こえづらいリードボーカルを例に挙げましょう。ボーカルの大部分がミックスの中でうまく聞こえるようにフェーダーを設定すると、小さく聞こえづらい箇所が「かくれんぼ」します。聞こえづらい箇所が聞き取れるようにレベルを上げると、ボーカルの残りの部分があまりに大きくなってしまいます。常に一定のフェーダー設定では、最高と最低の信号レベルの差(ダイナミックレンジ)が大きすぎるため、良いバランスが得られません。コンプレッサーは、このダイナミックレンジを減らすことでこれを改善します。コンプレッションにより、聞こえづらい箇所とそれ以外のレベルの差が小さくなり、フェーダーの設定が行いやすくなります。コンプレッサーは、大音量の信号を小さくする(または圧縮する)ことでこれを行います。エンジニアが行わなければならないのはどの箇所が大きいのかを示すことです。すべてのコンプレッサーにこの反応を制御する箇所がありますが、その方法は様々です。

Compression, Peak Reduction, Threshold & Input Gain
最も単純なケースはダイヤルを回すに連れてコンプレッサーがより置多くの信号に反応するというものです。最小の設定ではリダクションがかからず、徐々に回してゆくとピークにのみ反応するようになります。極端に設定をすると小さな信号を除く全ての信号に反応します。このノブは「コンプレッション」と呼ばれることもあります(たとえば、一部のJoeMeekおよびFocusrite Platinumユニット、およびDigital FishphonesのBlockfishなどのプラグイン)。Teletronix LA2Aでは、「ピークリダクション」と呼ばれました。これは、他のハードウェアおよびソフトウェア(Tin Brooke TalesのTLS 3127 LEAなど)でも見られる用語です。ノブを回すと圧縮率が高くなる(ピークレベルが低下する)ため、いずれの呼称も適切に働きを描写していると言えるでしょう。より一般的なのは「スレッショルド」コントロールがある場合です。スレッショルドしきい値)は、それを超えるとコンプレッサーが信号が大きすぎると見なすレベルのことで、ノブを下げるとより多くの圧縮が得られます。しきい値を最大に設定すると、音量が大きすぎるとは見なされず、リダクションはほとんど行われません。ただし、最小値に設定すると、ほとんどの音を大きいとみなし、小さな音以外をすべてリダクションします。最後に紹介するのは、Urei 1176LNで使用されているもので、CubaseのVintage Compressorなど、多くのプラグインにインスピレーションをあたえています。この設計では、信号レベルが固定されており、それを超えるとコンプレッサーが音量を下げます。圧縮量を指定する唯一の方法は、入力ゲインコントロールを使用して入力レベルを調整することです。このコントロールを上げるほど、信号がしきい値を超え、圧縮率が高くなります。この入力ゲインコントロールの動作が上記のコンプレッションおよびピークリダクションコントロールのものと同じように思えるかもしれません。それはそのとおりで、これらはすべて、リダクションする量を増やします。重要な違いは、コンプレッションまたはピークリダクションコントロール(またはThresholdコントロール)では、処理されるサウンド全体のレベルが低下する傾向がある一方、入力ゲインを調整する方法では、全体の信号レベルが大きくなります。私はコンプレッションをこれから勉強するという方には1176系の機器をおすすめしません。なぜなら、たとえその処理が不適切であったとしても、入力ゲインコントロールを上げたときに得られる全体的なレベルの増加は、処理がサウンドを改善しているという印象を与える傾向があるためです。とはいえ、この3つの一般的な設定のすべてに慣れることで、コンプレッサーの選択肢は広くなります。

Gain‑compensation Controls
どのコンプレッサーを選択するかに関係なく、ほとんどの場合、信号のダイナミックレンジを圧縮すると、全体的なレベルが変化することがわかります。チャンネルフェーダーを使用してこれを補正することもできますが、コンプレッサーがもたらす恩恵は大きく、これは実際あまりいい方法とは言えません。ほとんどすべてのコンプレッサーには、通常、アウトプットゲインまたはメイクアップゲイン(または単にゲインまたはメイクアップ)と呼ばれる出力ゲインコントロールが含まれています。これにより、圧縮された信号を元のレベルに戻すことができます。そうは言っても、コントロールが1つだけの「ワンノブ」コンプレッサー設計がいくつかあります。この場合によく見られるのは、デザイナーが何らかの自動メイクアップゲイン機能をバックグラウンドに実装し、どの程度の圧縮を行ってもオーディオの主観的なレベルを一定に保つようにしています。これは、コンプレッサーの制御を簡単にしますが、圧縮された信号は非圧縮信号よりも大きく感じられるため、経験の浅いユーザーは必要以上に圧縮してしまう恐れがあります。ここまで、たった2つの機能について長々と説明してきました。それはあくまでも、この2つの設定だけで多くのタスクをこなすことができるからにほかなりません。わかりにくいケースがあった場合には、この2つのコントロールに着目して、ソフトウェアのプリセットを活用して下さい。したがって、他の圧縮パラメーターまたはコントロールについて説明する前に、既に説明した内容を最大限に活用する方法を見ていきましょう。