数字が明かす小説の秘密

本屋さんで『数字が明かす小説の秘密』を見つけたのだが、これがおもしろい。既存の文学作品の解析して作家別の特定の品詞の割合を出したり、ある作家が頻繁に使う単語をあぶり出したりする。対象は英語で書かれた作品のみ。ヘミングウェイディケンズから、最近のものではフィフティ・シェイズ・オブ・グレイも含まれている。

個人的に興味深かったのは一番最初の項目の-ly型副詞の使用頻度について。多くの作家、教則本などでしばしば使うべきでないとされる-ly型副詞が使われている割合を作品別に調べ、その割合とその作品の人気の相関について調べたもの。完全とは言えないものの、ある程度の相関が見られ、-ly型副詞が多いほどその作品は高い評価を得ることが難しいようだった。

個人的に本を読むときに重要視しているのがリズムで、あまりストーリーの内容は気にしないことが多い。考えてみると-ly型副詞は文章を水増ししてリズムを悪化させる。この本で解明された-ly型副詞が少ない本を実際に読んで見ると(日本語に翻訳されたものでも)心地よく読み進めることができた。今後はこの本の中の数値をもとに読む本を選んでみようと思う。

この本はブックガイドとして書かれたものではないと思うのだが、ブックガイドととして優れていると感じた。解析されたデータとともに、作家が気にしていたポイント(副詞、感嘆詞を可能な限り使わない等)にフォーカスがあてられているので、改めてそういった部分に着目しながら読み進めると発見がある。